OpenSkyプロジェクトについて、よくある質問とそのお答えです。

2007年6月14日更新


■どういうプロジェクトなの?

□「オープンスカイ プロジェクト」の最終的な目標は、人(体重50kg程度の女の子)がひとり乗れる仕様で「パーソナルジェットグライダー」を作ることです。現在はテストフライト用の初級滑空機が出来たところで、今後は徐々に高度をあげてテストし、エンジンの地上テスト、地上走行テスト、ジャンプ飛行テスト、などいろいろテストを行っていく予定です。

左の機体が 現在テスト飛行に使用している2号機「M-02」です。

その下は愛知万博に出していた「M-01」。

M-01とM-02は基本的に同仕様の機体ですが、写真のM-01はリンケージやソリが未実装です。


■この機体は誰が設計・製作したの?

□このプロジェクトは (有)オリンポスにご協力いただいています。設計主幹は、オリンポスの四戸哲さんにやっていただいてます。
僕の知る限り、四戸さんはこの手の機体を実際に設計・製作できる日本で唯一の方だと思っています。
現状のところ、このプロジェクトは八谷とオリンポスの四戸さん、山崎さんによって進行しています。

(八谷と四戸さんの対談を、こちらに載せます)

 

■フェーズ1の 「メーヴェ1/2」と上の「M-01」は、ずいぶん形が違いますけど、どうしてですか?

□最初に試作として「メーヴェ1/2」をつくりまして、一応飛んだのですが、このまま1/1に単純に拡大するのは危険、と判断しまして、フェーズ2に入るときに設計を全面的に見直しました。
フェーズ2の「M-01」からはオリンポスの四戸哲さん設計による機体で、こちらは再度1/5モデルで検証を終えた後、実機の制作に入りました。当初は 2004年秋ごろ完成の予定でしたが、翼の形状やボディの形状の工作の難しさもあり、当初想定していた工数よりも大幅に日数が必要となり、結局、設計〜治具製作も含めて、「M-01」完成に1年半、テストフライトまではさらに1年ほどかかってしまいました。


 

■「M-02」のデータを教えてください。

□ M-02諸元です。(実測値)
全長   3130mm (スキッド含む)2083mm (胴体ポッド長)
全幅   9636mm
全高    1315mm(操縦把上端〜タイヤまで)
965mm(ポッド上面〜タイヤまで)
主翼面積 12.2m2 (内翼(片)3.8m2 :外翼(片)2.3m2)
上反角   +4°(内翼部)
     -12°(外翼部)
平均空力翼弦(MAC) 1287mm
重心位置(C.G.)MAC  17%
機体重量    66kg(エンジンなしの実測)
パイロット重量  50kg程度 (装備込みで55〜60kg程度)
設計失速速度 11m/s
この機体は、訓練用の初級滑空機とジェットエンジンを載せた自作航空機の2機を制作し、合計2機で運用の予定です。

(量産化の予定はいまのところありません)


■この機体は、今すぐ自力で飛べるの?

□2007年には自力で飛べるようなジェットエンジンを搭載した試作機M-02Jを作る予定で,現在機体の改造やテストなど行っています。

 

■機体の素材は何でしょうか

□木製構造体とFRP複合材(コンポジット材)のハイブリッドです。
主翼の構造材には木製桁と木製のリブ、外翼前縁および翼端とボディにはFRP複合材を 使っています。なお翼の表面はフィルムを使っています。
現在、木製の飛行機はほとんどありませんが、別にノスタルジーから木製で作っているわけではなく、 非常に軽くて強い機体を安く作ろうとすると、木製のほうが合理的だったりもするのです。まあ全部コンポジット(複合材)で作れれば、実はもう少し軽くすることも出来ると思うのですが、2〜3機くらいで全コンポジットにすると、お金がかなりかかってしまう、というのも木製にした理由です。

 

■飛行時の速度、および最高時速はどれくらいでしょうか

□機体そのものは対気速度で時速200kmくらいまで耐えられますが、 実際は人間がむき出しで乗るので、時速120kmくらいが限界ではないでしょうか。実際の飛行はパワードハンググライダーと同じような運用をしますので(エンジンは高度を稼ぐために使い、高度(位置エネルギー)を使って速度を出す) 運用速度は時速50km〜90kmあたりになると思います。
また、失速速度は11m/s(時速42km)を想定しています。
この機体の場合、どちらかというとそこが重要で、つまり 安全性の面から人間が反応できる程度の速度で離陸・着陸することを優先して設計しています。

■滞空時間はどれくらいになるのでしょうか

□これは、そのときの天気とパイロットの腕によります。実際のところ、この機体は飛行機と言うよりグライダーとして設計されており、燃料フル(10リットル程度)でもエンジンを使えるのは15分程度です。ただ、コンディションが良く、パイロットの腕があれば、上昇気流を使ってかなりの時間飛んでいることはおそらく可能です。
なおこの機体は、高性能な固定翼ハンググライダーと同程度の滑空比を出せるように設計しています。(L/D 15〜18くらいの予定) ちなみに現在の高性能グライダーであればコンディションがよければずっと飛んでいることも可能です。


■操縦はどのように行いますか?

□機体中央についている「ハーネス」で行います。 これは内翼についている舵(エルロン)にロッドで接合されており、ハーネスを左右に傾けることによってロール方向の操作を行います。またハーネスは前後方向にも移動し、ピッチコントロールは重心の移動で行い、エルロンでのノーズアップ・ダウンの操作はおこないません(ピッチ方向の安定性がシビアなので、エレボン的な2系統の操作をミックスさせるのはよくないと考えたのです)。また、操作把の右にはジェットエンジンのスロットルコントロールがつく予定です。

■着陸はどのようにするのでしょうか

□機体中央の主輪でおこないます。ソリのみにする案もあったのですが、舗装路の飛行場でテストする可能性が高いので、タイヤにしました。なお、機体前方のスキッドはブレーキとしても使用します。


■ これ、大きくないですか?

□えっと、たぶんアニメーションのメーヴェと比べているんだと思いますが・・・現在の地球の空気密度および人間の重量だとこの大きさがひとつの解答かと思います。

(翼面積12m2は、ハンググライダーとほぼ同程度の面積です)

もし離着陸の速度がもっと速い、高速で航行する機体を空想すると、もっと小さくも出来ます。けど、そうするとエンジンを使わない状態での滑空および着陸がかなり難しくなります。

ま、これでも外で飛んでいるとそんなに大きく感じないですよ。むしろこの大きさが安心感あったりしますし。

それとこの機体、分解するとハイエースなんかのワゴン車に全部詰めたりできるように作っています。



■この機体は量産するの?

□いいえ。量産する予定はありません。また広く販売する予定もありません。 このプロジェクトは「このような機体が製作・実現可能である」ことを立証するためのもので、それ以上の量産や販売を目的にしてはいません。


■販売や利益でなければ、このプロジェクトは何を目的にしていますか?

□私は、このような飛行機を欲しいとずっと思っていて、また、自分でも乗ってみたいと思っていたからです。
このような飛行機に気軽に乗れるような世界が実現するのはそう簡単ではないと思いますが、しかし飛行可能な試作機を作ることは可能なように思えたので、作ってみることにしたわけです。


■すごくこれに乗ってみたいんですけど乗るための資格とかあるんですか?

□この機体はハンググライダーとグライダーの性質を併せ持っていますが、操作方法はハンググライダーに近いこと(体を使って操作すること、ピッチ、ロールの2軸制御であること)から、まずはハンググライダーに乗れる技量が必要になってくると思います。

当面はエンジンなしの機体でのテストになりますが、これには原則として八谷が乗りますし、それ以外の人を乗せるとしても技量をもったテストパイロット以外の人を乗せる予定はありません。

 

■以前パイロットを募集していましたが、どうなりましたか?

□2004年に募集を終え、4名が候補として残っています。

この4人はグライダーおよびハンググライダーの経験者です。

(全員八谷よりも飛行経験があります)
実際には、自分が乗れないようなものに人を乗せるわけにはいかないので、自分(体重52kg)も訓練・飛行テストを行います。今後のテストフライトには八谷+その4名中の1〜2名でのぞみます。


■M-02Jのテストフライトは公開しますか?

□いいえ。M−02Jのテストは今後も原則非公開です。

ただ、M−02によるバンジーフライトは、2006年9月に朝霧高原で公開テストしました。それと同じような形式での公開テストは、今後また行うかもしれません。


■乗ってみた感じはどうですか?

□個人的な感触では「想像していたより素直で、乗りやすい」というのが第一印象でした。そうは言っても最初は操縦にいっぱいいっぱいでしたが、北海道のテストでようやく機体の特性がわかってきたかな、という感じです。

ひとことで言うと・・・・ツンデレ?


■立って乗れそうですか?

□それは・・・僕では無理かもしれません。ただ、人類にとって無理、とは思いません。10年後にはそういうことが出来る人も出てくるかもしれない、とは思います。


■逆上がりみたいにくるんと乗れそうですか?

□それは・・・もっと無理っぽいです。

ぶら下がるのも無理なんじゃないかなぁ・・・・

・・・とか言ってますが、アレグリアとかモトクロスとか見ていると人間と言うのは訓練次第で結構なんでもできてしまうので絶対無理とは言えないですけどね。ただ子供の時から10年くらいは乗ってないと無理かも。


■オープンソースにしてください。

□僕も最初はオープンソースハードウェアにしようと思っていたのですが、今はオープンソースには、しないと思います。

理由は、「設計図だけで作れるわけではないし、中途半端に作られると命に関わるから」。

ソースコードさえあればほぼカンペキに同じものが再現が出来るソフトウェアと違い、モノは材料の質、加工技術、精度、工法で出来上がりが大きく違うモノになります。そして自動車や家と違い、飛行機は作るノウハウを持っている人が極端に少なく、また事故があったときにシャレにならないので、たぶん基本設計図以外の図面はあまり公開しないと思います。すみません。

まあでも、「本当に飛ぶかどうかわからない」段階から今は「ある程度飛ぶことが立証された」わけですから、今後作る人がいたらだいぶ楽だとは思いますよ。


■どのくらいの予算規模なの?

□フェーズ1(模型制作など)で使ったお金は350万円くらいでした。 これは当初は八谷の自費でまかなわれました。

その後、フェーズ2以降に関しての予算、約3000万円(2機の制作実費)は、ペットワークスの研究開発費として拠出しています。一見高そうですが、航空機の開発予算としては、破格の低予算だと思います。

まあ機体を作るだけなら完全な赤字ですが、なんか自分だったらできそうだと思ったのと(体重が軽いからね)、プロジェクトとしては誰かがやるべきだと思ったのも制作した理由です。


■以前、スタッフに応募したのですが、その後なんの連絡もないのですが。

□本当にごめんなさい。
当初は人手が必要かと思い、スタッフを募集しましたが、その後実製作の進行に関しては、細かい手作業が多く、人数が必要な状況がほとんど生じなかったのでした。
ただ、今後テストフライトを行うようになると、沢山の人手が必要になってくることもあると思いますので、その際にご連絡をすることがあるかもしれません。もしもそのときにまだこのプロジェクトにご興味がございましたら、お手伝いくださいますようお願いいたします。


■なんかフェーズの分け方が微妙に変わったような。

□2006年3月10日に、フェーズ2とフェーズ3の区切りを若干変えました。原則としてフェーズ2=機体制作フェーズ、フェーズ3=テストフライトおよびジェット化フェーズとします。変えた理由は、元の案だとフェーズ2が2年半、フェーズ3が半年、みたいになりそうだったので、それを2年、1年に期間のバランス調整を行った、というところです。



■これはスタジオジブリ公認のプロジェクトなの?

□ちがいます。これは八谷が勝手にやっているもので、スタジオジブリやそのほかの会社とは全く無関係です。
ですから、これに関する問題や責任は、すべて八谷にあります。
(ただ、いつか宮崎駿監督に、実際の機体が飛ぶところを見て頂きたいとは切に願っていますが。)
ちなみにフェーズ2以降、機体の名称には「メーヴェ」という名称は使わないことにしたのですが、それは万一事故が起こったときに、ジブリや宮崎さんに迷惑をかけたくないからです。そう、もちろん安全第一にやっていきますが、このプロジェクトは登山やヨットと同様、ある程度のリスクのあるプロジェクトなのです。

 

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